森監督インタビュー 2/2

「光も闇もなければ、人間は前に進めない」

――映像という点では、泉水が葛城のマンションを訪れるシーンは、一目で葛城の嫌らしさが実感できる印象的なシーンだと思いました。

写真:リビングでカメラを持ち、笑顔で話す葛城。白いシャツに水色のセーターを着ている。葛城の向こうのテレビ画面に、驚いたように見開いた泉水の目が大写しになっている。 「当初、テレビのモニターにスタッフの姿が反射してしまうので、フリー素材か何かを映そうと探していたんです。でもなかなか良いのがみつからず、撮影の前日にあのアイディアを思いついたんですね。ああすることによって、葛城の嫌な感じも出せるし、1枚の画に泉水と葛城のふたりの表情を入れることができるんです。それがおもしろいと思ったんですね」

――音楽も非常に印象的です。編集段階でイメージを組み立て直したそうですが。

「撮り終えた映像を観た時、もう少しみずみずしさを足したいと思ったんですね。それで渡辺善太郎さんにお願いをしたんです。これは僕の特徴なんですが、設計図通りにプラモデルを組み立てるより、粘土をこねくり回しているうちにかたちができてくるというやり方のほうが好きなんですね。もちろんそれではダメだと反対するスタッフもたくさんいますが(笑)、僕はそのほうが魅力的なものができると思っているんです。僕の場合、真っ白い画用紙を前にして、ペンを動かしているうちに絵ができあがってくるというところがある。それで編集の時は、もともと考えていたイメージを捨てて、上がってきた映像から組み立て直すようにしているんです」

――CGになるべく頼りたくなかったということですが、それはどのような考え方からですか?

「やはりそこに嘘が見えてしまうのが嫌なんです。嘘というのは、作り手の作為と言ってもいいかもしれませんね。もちろん誰も気づかないようなクオリティの高いCGや、逆にCGを全面に打ち出したものなら問題ないんですが、どうしても中途半端に気づかれてしまうことが多いので。それに、CGではまだ空気感までは描けないと思っているんですね。どこか空気が裁断されてしまう感じがする。人々の暮らしには、やはり空気というものが存在していて、その空気に包まれて人々も存在している。たしかに技術は進歩してきていますが、まだ空気を描くところまでは進歩していないと思うので、現場で出来ることはなるべくやることにしているんですね」

取材・文/門間雄介

前のページへ

▲ページのトップに戻る

ニュースブログ劇場情報リンク映画館に行こう!キャンペーン